のっけから「受け売り」の展開に、甚だご海容を願いたく、続けるとして。
“向田邦子”さんのエッセイ、その中に、タイトル「お辞儀」があります。
それは、向田氏の「お父様」にまつわる話なのですが。
同氏(父)は、幾つものエッセイに登場する通り、非常に厳格な人物。
そして、向田氏が女学校2年の時、祖母が亡くなられ、自宅での通夜。
突然、なんの前触れもなく…
お父様の“会社の社長”が自ら出向いては、通夜にみえられ。
当時、一介の課長に過ぎなかったお父様は、社長へ対して。
慌ただしく玄関へ飛んで行っては「わざわざ足をお運び頂きまして…」と。
卑屈とも思えるほどに「お辞儀」をされる。
それまで、物心ついた頃から、威張り、家族を怒鳴り散らす。
「そんな父親の暴君ぶり」ばかり見ては「嫌だな」と感じていた向田氏は。
社長を前に“ひれ伏す”父を見て。そんな稀有な光景に遭遇するにつけ。
肝心となる“祖母の葬式”の悲しみは、どこかへ消し飛んでしまい。
「父のお辞儀の姿」だけが目に残ったと。
そして、胸に去来した心情を書き綴られます。
「私達に見せないところで、父はこの姿で戦ってきたのだ」
「父だけが夜のおかずが一品多いことも」
「仕事の成績が思うにまかせない締め切りの時期に…」
「八つ当たりの感じで飛んできた拳骨(げんこつ)をも許そうと思った」
「私は今でもこの夜の父の姿を思うと」
「胸の中でうずくものがある」と。
そこで、私などは…
エッセイ集の幾重にも亘る項の中、この数行に目を落とした瞬間。
自らの日常が自然にオーバーラップしてしまったのか?
そこを酌まれる娘さん(向田邦子氏)の…
「心の機微」に感動、共鳴してしまったのか?
即座、泣きそうになってしまいまして。(なんとか堪えましたけども)
うむ。
いち“家族”の限定的な話に留まらず。
メタ次元から、あらゆる社会にも通念する、リアルな人間模様に触れ。
改めて、我思ふ。
とかく“目に飛び込み&耳に入るモノへ”条件反射してしまい。
はずみとも言える一義的な感情や思想が飛び交う現代社会にあり。
言うほどシンプルに世の中は回っていないわけで。
やっぱり…
「読書」って、イイネ♪と。
投稿日 : 2017年2月11日
『白眉(はくび)』