恥じぬ誇り

あれは、まだ議員に当選する前、今年の3月の話です。


私が日課でもある、ジョギングをしていると…


非常に交通量の多い大きな交差点で、目の不自由な方が、信号待ちをしてらっしゃいました。


時は週末の夕方であり、場所は、ただでさえ多い交通量に拍車が掛かり。


音声で青信号の横断を知らせる装置も付いていない交差点。


その男性は白杖(はくじょう:段差や点字ブロック等を確認する白い杖)を持ったまま。


一生懸命、耳を凝らしては横断歩道を渡るタイミングを計られているのですが、誰が見ても危ない状況。


私は生来、同様のケースに遭遇し、まず黙って通り過ぎる事などありません。


その時も当然ながら、駆け寄っては「大丈夫ですか?どちらへ向かわれますか?」と声を掛けさせて頂く事に。


すると、横断歩道を渡った後、そこから右折して、5mほど先に位置するバス停から「バスに乗りたい」との返答。


そこで、先ずは手を取り一緒に青信号を渡った後、バスに乗車するにも色んな行き先のバスが来るので。


取り敢えずはバス停にて、一緒にバスを待つ事にしました。


すると、男性が語りかけて来ます。


「私は毎週、ここからバスに乗って30分の所にある公民館まで、楽器のレッスンに通っているんです」


言われる通り、背中には管楽器を背負ってらっしゃる。


「そうなんですか♪」と私が相槌を返すと、男性は続けます。


「ちなみに、このバス停の後ろにあるのはコンビニですか?」


私は、絶句しました。


と申しますのも、バス停に隣接するは“不動産屋のみ”であり、つまり、男性は弱視ではなく、全盲。


全く周囲が見えない中で、毎週、交通量の多い交差点を渡っては、正に「手探り」で大好きな楽器の演奏を続けている。


しかも、この交差点は横断歩道を渡り終えた箇所から、利用者の多いバス停までの「約5mの部分」だけ。


このアプローチの部分だけ、点字ブロックが設置されておらず、言うなれば、バス停が大よそ何処にあるのか?


また、バスが停車した際の「ドア位置」も分からない状態。


不穏当であれ、正直な話、もしも自分が同じ境遇に置かれたならば?


これだけ大きな交差点を横切ってはバスに乗ってレッスンに通えるだろうか?


「私ならば車やバスに対する恐怖で絶対に無理だ」と感じたものです。


と同時に、「これからも男性は、この危ない生活を“毎週”送られるのか…」と思うと…。


無事に男性がバスに乗車されてはレッスンに向かわれた後も、私の心は全く晴れませんでした。


その後。


私が議員となりて区役所へ出向いた際、1番に要望させて頂いたのが、同交差点の「点字ブロック設置」。


自己弁護でなく、敢えて補足するならば。


この手の「改善」には、必ず予算に前例などの“ハードル”が付きまといます。


また、私は選挙中も下記の旨を一貫して訴えて参りました。


何に取り組むにも「予算」とは限られ、無限に湧いて来るモノではありません。


例えば、極端な話となれ、広島市の年間予算がシンプルに「100万円」だったとして。


「有権者の皆様!我が区を住み良くする為に予算を30万円も引っ張って来る所存です!」と掲げたとしても。


その陰には必ず、予算を削られてしまう「他の区」が発生する。


ゆえ、地元区を見据えると同時に。


市全体の無駄を見直し、内需を拡大、外貨を獲得するなど多岐に渡る施策を模索しては…


「この100万円の原資を如何に増やして行くかへ向けて取り組んで行きましょう!」


「私は“自らの延命”の為に地元の点数稼ぎをする様な政治活動は絶対にしない!」と。


話は、ちと脱線しましたが、足をケガしては未だジョギングが出来ず、冒頭の交差点には近寄る事も無かった、ここ数週間。


今日の夜、ふと足を運んでみると…


しっかりと、真新しい点字ブロックが設置されていました!


区役所の担当者が、「点字ブロックの設置」へ向け、真摯に、かつ全力で前向きに取り組んで下さったからこそ。


これまた、点字ブロックには、計測された形跡を物語る、沢山の白いチョークの線があり。


現場で働く人々が、猛暑の中で仕事とは言え、労を惜しまず取り組んで下さったからこそ。


これだけ早い設置の“実現”がある。


心底、嬉しくて、何だか温かくて、22時のバス停にて涙が止まらず、一人、ただただ号泣してしまいました。


新たに設置された点字ブロックの利用者は、117万人の市民の中で“ほんのわずか”なのかもしれない。


でも、1人の抱える不安が少しでも解消されたらば、「より良い広島市へ」一歩前進した事は間違いありません。


有り難いな。本当に有り難い。


この感動を、そして「初心」を、いつまでも忘れぬように誓う夜であります。


心から感謝。

投稿日 : 2011年7月20日

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