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日記|DIARY

2009年10月28日  どこから


昨日のこと。


現場が終わり、早めに帰宅したので洗車をしていると、礼服を着た1人のお婆ちゃんが杖を突きながら近寄って来ます。


年の頃、およそ80歳。長い距離を歩かれたのか、息が上がってらっしゃいました。


そして、声を掛けられる。「○○駅は、どちらですか?」


その駅は、我が家の“最寄”から東へ2つほど先にあり、いずれにせよ、お婆ちゃんは道に迷っている様子。


私が「○○駅はココから離れている事実」を告げると、何でもコレから知人のお通夜に向かわれるらしく…


お婆ちゃんは「ならばタクシーで向かう」と言われます。


タクシーを捕まえるにも近くに大通りは無く、これから呼ぶにしても通夜であれば時間が関係して来て、何より足を引きずってらっしゃる。


いずれにせよ、このまま放ってはおけず、お婆ちゃんは「タクシーで行く」と遠慮されるのですが、ここは乗り掛かった船。


この時点で既に私はお婆ちゃんの事情通になっており、取り急ぎ、○○駅まで車で送ってあげる事にしました。


日暮れの街を疾走する車中には、洗車途中でビーチサンダルに短パン姿の兄ちゃんと、礼服を着たお婆ちゃんと言う対照的な二人の姿。


大通りを走らせ、高速にも乗り、その間、それは色んな話をしました。


お婆ちゃんは、数年前にご主人を亡くされ。


近年、最愛の息子さんまでも失われたそうで、ショックのあまり、自宅への帰り道が分からなかった事も度々あったそうです。


生きてる毎日が辛く、ある日、先立ったご主人のもとへ行こうと、近所の海へ向かい。


波打ち際に腰を下ろし、ただ、潮が満ちて来るのを、波が自らをさらってくれるのを静かに待っていた…


と、その時、お孫さんが「お婆ちゃん、ここに居たんだね♪」と偶然にも駆け寄って来て、その笑顔に、自らで命を絶つ行為を踏み止まらせたと。


私はハンドルを握って車を走らせながら、何も言う事が出来ませんでした。


約30分後、目的の駅に到着。


近所の人々からお通夜の式場を聞きだす事が出来たので、引き続き、そこまでお婆ちゃんを送り届ける事に。


車中、お婆ちゃんは恐縮されながら、幾度も幾度も私ごときにお礼を繰り返されます。


そして、式場に着いた頃には、辺りもすっかり暗くなっていました。


車を停車させるなり、お婆ちゃんは「これはタクシー代だよ」と私にお金を渡そうとします。


しかしながら、車中、沢山の会話の中、私はお婆ちゃんが年金生活だと言う事を伺っており。


失礼と知りながらも、「気持ちだけ受け取ります」とお金を返しました。


何より、場所は式場の入口で、お通夜は既に始まっている。


私は足の悪いお婆ちゃんをケアしようと、運転席から降りて助手席のドアを開け、お婆ちゃんを見送りました。


ホッと一息。


そこで、出発しようとギアに手を伸ばすと、ドリンクホルダーには綺麗に折りたたまれた“お札”が…。


私は何も「気持ちだ」「感動だ」と謳い、今回の話を、その方向へと帰結させるつもりなど毛頭ありませんけども。


何だろうな。


お婆ちゃんも人。お孫さんも人。誰しも人。


人を愛し、人を失い、人に落ち込み、人に元気づけられる。


全て「人」です。


「人」を大切にしましょう。

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