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2020年 2月 議会 総括質問

これより、総括質問を行います。
遡れば2014年、国は「まち・ひと・しごと創生法」を制定後、2015年度から2019年度までを第一期と定めては、「まち・ひと・しごと 創生 総合戦略」に基づく取り組みを進めて参りました。

また、この法制定を契機として、全国の各自治体でも国と連携しては並走すべく、先ずは各々で「地元の地域特性」を生かした総合戦略を立案し、その後、第一期の計画期間となる今日までの5年間、掲げた基本目標の達成に向け、取り組んで来たところであります。

改めて、こうした国家規模で総合戦略を打ち立てた意図には、創意工夫に富む各地方圏の特性が生かされた取り組みにより、地域産業が活性化されては魅力ある仕事、雇用が創出され、また、結婚、出産、育児の環境を更に整える事によって、人々には比較的「出生率の高い地方圏に」踏みとどまってもらい、一方、一極集中の流れが顕著となる「出生率の低い東京圏」から地方への人の流れを生み出し、国内全体の人口減少を緩和、是正する基本的な狙いがあった事は皆様もご承知の通りです。

そして、今年度末に第一期の計画期間が満了を迎える事から、政府は昨年の12月下旬、第二期となる「創生戦略」を閣議決定し、ここへ伴い本市に於いても、これまでのKPI(重要業績評価指標)の結果を踏まえながら、第二期の総合戦略を策定、今後も継続して取り組む運びであり、その素案をまとめる最中、今日を迎えている状況にあります。

こうした総合戦略を引き続き、推進して行く上でここに一つ私見を挟みますと、前述の通り、国が危惧する人口減少を含めた少子高齢化にせよ、何より「人々が健康で長寿を全うされる」は喜ばしい事であり、重ねて我が日本国は限られた国土と資源の中、コレまで「多すぎる人口を抱えていた」との視点も頭ごなしには否定できず、現在は日本列島として「人口の適正化が図られている」成熟への道のり、その過程に位置するのかもしれません。

つまるところ、人口減少が全て悪と胆略的に断じる事は出来ませんが、いずれに致しましても、社会を駆動する経済を維持しては、様々な現行システムの破綻や地域コミュニティの崩壊を防ぐ為にも、急激な人口減少による社会の激変は避けなければならず、加速する人口減少は簡単に止められなくとも、現在の人口を横ばいに保つ出生率を「人口置き換え基準」と申しますが、諸外国でも散見される通り、まずは基準値の確保を目指し、「人口の減少カーブ」を緩やかにする事は、為政者のみならず、我々世代の至上命題とも言えます。

そこで今一度「人口減少」を念頭に置きながら、これまでの第一期、そして今後の指標となります第二期の「世界に誇れる『まち』広島」創生総合戦略について伺って参りますが、まずは冒頭、業績の評価基準となるKPIとは別に、ここに敢えて突飛な比喩を持ち出すとすれば、まるでボクシングの「オープン・スコアリング・システム」、試合途中の第4ラウンド、また第8ラウンドの終了時に採点の途中経過を告げられる「公開採点制度」の様に、つい先ごろ私共は、国民の方々より政治の現場へ向けて「生活実態の伴った採点」を突き付けられる事となりました。

1月31日、総務省が発表した「昨年の人口移動報告」によると、東京圏への転入超過は3年連続増加の「約14万9千人」に上り、こうした東京圏への「転入超過」は24年連続でもある事から、憂うにせよ、取り分け驚く動向ではありませんが、その裏で人口の流出が流入を上回る「転出超過」は全国で39道府県に及び、中でも転出超過の最多人数「8018人」を記録したのは、他でもない広島県となり、本市に致しましても「約1200人」の転出超過となっています。

この様な傾向は、政治に限らず様々な要因やタイミングも絡み「どこで数字を切り取るか」の、あくまで途中経過であって、また、人々は自らのライフステージにより、その時々に「最も住み良い」と思われる自治体を選択し、移動を繰り返されるので、この度、広島へ突き付けられた人口の「流出超過」にせよ、私共は胸に刻みながらも過度に悲観する事なく、地道に、着実に、広島の受け入れ態勢を確立すべきであります。

そこで、今後も歩みを進める上で、何より注視されるべきは、人口の流出や流入による「社会増減」以上に、出生数や死亡者数に係わる「自然増減」ではないでしょうか。

進学や就職を機に、若者世代が夢や希望を抱き、東京圏を目指すのは全国的な傾向でありますが、地方圏より流出した人口は、流出した先で社会活動を継続しては我が国を支えて下さるので、結果、国内の総人口は変わらぬ「ゼロサム」となりますけども、死亡者数が出生数を上回る自然減となると、そうは参りません。

こうした現実からも、出生数の向上へ様々な手が打たれながら、近年は4人に1人の男性が生涯「結婚しない」状態を迎えては晩婚化も加速し、必然的に高齢出産の傾向が如実に表れ、かつ、欧州などと比べ婚外子の少ない日本に於いて合計特殊出生率が回復し難い現状を鑑みても、出発点となる「婚姻の件数」にせよ重要な鍵を握って参ります。

そこで、本市の出生数、並びに婚姻件数に目を向けてみますと、近年、人口は横ばい、もしくは微増している状態にありながら、つまりは対象となる人口の分母は増えているにも拘わらず、出生数は年々減少傾向にあり、平成30年は、昭和41年以来となりますが「1万人台」を割り込みました。

また、婚姻件数も同様、年々減少傾向にあり、平成元年あたりと直近の数字を比較いたしますと「約1000件」も減少しているのが実情です。

確かに、政治が結婚の斡旋に介入するモノではありませんが、副次的に社会基盤整備や福祉サービスを通じ、その舞台を整える役割は担える訳で、本市としては、こうした近年の現状を如何に捉え、これまで具体的に何に取り組み、また、今後は如何なる手を打って行くのか、お聞かせ下さい。

人口動態に関連して続けますと、先に進学などを機に若者が東京圏へ向かう話に触れましたが、現在は東京都23区内における私立大学の定員数が厳格に管理され、10代後半の若者が東京圏へ「過度に移住する動き」が抑制、コントロールされておりますけども、他方、中枢中核都市では、25歳から39歳の「転出超過」が後を絶ちません。

この顕在化する傾向は、飛躍した話となりますが、所謂、昨今の選挙における「低下する若者の投票行動」と同様、自らの参画を発露とした「身体実感の伴う街づくり」が希薄化しているゆえ、開拓精神の旺盛な多くの20代、30代が、輝く他都市を目指し「実際に行動に移している」証左とも言えるモノです。

ならばと、一つ事例を引き合いに出し、要諦に触れて参りますと、例えば直近では今月10日に、本市の都市計画行政を「長期的な視点」から推進するにあたり、有識者等から「より専門的で幅広い意見を聴取する」事を目的に「第1回都市マネジメント懇談会」が開催されました。

この懇談会の委員名簿6名に目を向けると、都市計画、環境、交通、経済観光の有識者となる大学教授や元行政職員も名を連ねていらっしゃり、当然ながら私は同懇談会の開催を非常に有益だと感じており、見識ある委員の方々に対しても言及するつもりはありません。

ただし、都市計画を「長期的な視点」で幅広く意見聴取するなら、まずは懇談会の委員を有識者に限定する事なく、本市には他の先進都市に勝るとも劣らない数々のユニークな事業を展開される若い市民が数多と存在し、こうした多様なる人材を委員として重点的に選定、まさに「次世代を担う構成員」で既成概念に囚われる事なく、自由闊達に意見を出し合い、未来の都市像を語って頂く。

その次に、今回の様な有識者と呼ばれる諸先輩方と共に更なる意見交換を重ねては、より実現性を高め、単に不確かなる未来を予見しては対応、追随するのではなく、不確かであるからこそ、本市がフロントランナーとなりて、トレンドを生み出しては具現化する「市民参画を実感して頂く街づくり」が今、本市に求められているのではないでしょうか。

無論、二元代表制を用いる現行の地方システムに於いて、本来であれば市民の窓口となり、その意見を聴取、行政へ届けるのは議員の担う役割であり、また、本市に於いても車座談義や区政懇談会などは開催されておりますけども、この度の様に「懇談会」と言う形式で20年後、30年後も「現役で活躍する人々」の声を汲み上げれば「市民参画の実感」、その度合いが飛躍的に向上して参ります。

つきまして、今回の都市マネジメント懇談会は第1回ですが、第2回、もしくは別の形態で新たに設置するにせよ、20代〜40代の市民が長期的な視点で未来の都市計画を語り、そこを「聴く機会を設けるべき」かと存じますが、ここに本市のご所見をお聞かせ下さい。

ここまで、創生総合戦略の「基本的な位置づけ」の部分、「人口の将来展望」について触れて参りましたが、続いては本市の掲げる基本目標、その最初に据えられている第1章「平和の願いを世界中に広げるまちづくり」について伺います。

コチラ、第1章の第1節では「世界で最初に被爆し、廃墟から立ち直った都市として、これまで訴え続けて来た、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて取り組む」とあり、第2節では「各国為政者や世界中の人々の広島訪問を促し、被爆の実相を守り、広め、伝える取組を進める」とあります。

この更なる実現へ向け、多大なる役割を果たす場所としては平和記念公園、並びに平和記念資料館が挙げられますが、私共は5年の計画期間を定める総合戦略を展開する際も、その時々の社会変動へ対して都度、柔軟に対応しては、同じ政策を打つにせよ「最大限の効果が発揮し得る」よう、自在に舵を切って行かなければなりません。

そこで、新たに訪れる5年の計画期間を見通した際に、本市や我が日本国としても大きな契機となる一つに、世界最大級のスポーツの祭典「東京五輪」が挙げられ、5カ月後の7月24日に開幕を迎える事となります。

つきましては、一つの参考事例として「史上、最も偉大な大会」と国際統括団体に言わしめ、日本中を感動の渦に巻き込んだ「ラグビーW杯日本大会」を持ち出すと致しますが、この44日間にわたって開催されたW杯では、世界から約170万4千人もの人々がスタジアムへ足を運び、大会期間中、各都市で開催された16カ所のファンゾーンにも約114万人の人々が来場され、経済効果は約4400億円に上りました。

重ねて、ある新聞社が観戦に訪れた訪日外国人にアンケートを行ったところ、平均滞在日数は約18日間で、最長は57日間にも及ぶなど、周知の通りラグビージャージを着用した外国人が全国各地に溢れ、このラグビーW杯にも遜色の無い夏季の東京五輪が、間もなく本市より飛行機で1時間半、新幹線では4時間で結ばれる都市で開催を迎えようとしています。

さて、世界中から「一人でも多くの人々を広島」へ促すにあたり、こうした「またとない絶好の機会」を本市は如何に生かして行くべきでしょうか?

例えば、東京都では五輪の開催期間中、鉄道各社が最大で2時間ほど終電の運行時間を繰り下げ、北海道や宮城県など遠隔地の会場周辺でも同様に終電を繰り下げる方向です。

ここまで話が迂遠、遠回りして参りましたが、要は生涯を通じて海外より日本や広島へ訪れる「その予定が皆無であった」かも知れぬ人々が、ご縁とも言えますが東京五輪を機に訪れる事になった、こうした好機を「決して逃してはならない」かと存じます。

そして、ひとたび五輪をキッカケに本市へ訪れたらば、大多数の方々が平和記念公園、並びに平和記念資料館に足を運ばれますが、平和記念資料館へ向かうにしても、7月は開館時間が「18時まで」であり、入館は、その30分前に制限されます。

また、8月に入ると開館時間は「19時まで」、そして8月6日を迎えるにあたり、8月の5日、6日は限定的に「20時まで」延長されますけども、先のラグビーW杯を機に訪日され、数週間も滞在された外国人のケースを鑑みても、如何に入館を幅広く担保するのか?

昨今、夕刻時から夜間にも旺盛に各所を巡る訪日外国人へ対し「夜のメニューの少なさ」が問題化して久しい日本に於いて、平和記念資料館にせよ、この度の好機を存分に生かすべく、かつ、お一人お一人のニーズを軽んずる事なく、東京五輪の開催期間中「7月下旬あたりから」となりますが、本市の平和記念資料館の開館時間を例えば「20時まで」延長する試みを図るのは如何でしょうか。

コレは、五輪に絡めたニュース・ソースに成り得ると思われ、何より一人でも多くの方々に被爆の実相を知って頂く、また、宮島へ向かった後、余裕をもって平和記念資料館にも訪れ、そこから宿泊客を増やすアプローチに寄与するかも知れず、この試験的な試み如何では今後、季節に応じながら年間を通じて「開館時間の延長」との道筋が新たに見出せるかもしれません。

検討にあたり、時間的な余裕は潤沢にありませんが「出来るか、出来ないか」ではなく「やるか、やらないか」であり、是非とも導入して頂きたいと切望するモノですが、ここに本市のご所見をお聞かせ下さい。

次に、創生総合戦略の「基本目標2」に掲げられる第2章「活力の創出と都市の個性の確立を目指したまちづくり」について触れて参りますけども、ここでは「業務・商業機能の集積・強化」や「圏域経済の活性化に資する産業の集積・強化」が挙げられています。

例えば、本市の財政運営にあたり、自主財源を安定的に確保する上で、人口動態や景気動向に左右される市民税は勿論の事、闊達なる企業活動からの法人税、また、土地の高度利用化も進めながら、応分の割合を占める固定資産税の確保も必須となるは、ここに強調するまでもなく、そこで改めて「広島の企業動向」に関して報じられたニュースに目を向けてみると致します。

昨年の7月に発表された、帝国データバンクによる「企業の本社移転に関する調査」によりますと、2009年から2018年までの10年間で、県外から広島へ転入して来た企業は137社でしたが、広島から県外へ転出した企業は207社に上り、差し引きで70社もの「転出超過」となりました。

また、「広島から転出した企業の移転先」としては、情報や人材の集まる東京が最も多かったのですが、次いで岡山、続いて山口などの隣県が並ぶなど、景気如何にせよ法人税を納めてくれるかもしれぬ本社機能が近隣に転出されている現実は、私共も真摯に受け止めなければなりません。

では何故、多くの企業が広島から本社を移転されたのか?この理由までは今回、報じられておりませんでしたが、全国的にも人手不足、後継者不足の問題を抱えるなど、売り手市場全盛の時代、広島でも一定の高い有効求人倍率を保ち、重ねて全国トップクラスの「ホテル稼働率」を記録する昨今の広島にあって、ならば何がマイナス要素であったのか?

私なりに、広く民間企業の方々にヒアリングを行ってみますと、一つは「オフィス不足」を頻繁に耳にして参ります。

近年、オフィスと言えば、広島でも空室率は改善され、賃料にせよ首都圏まで行かずとも、かなり高騰しているのが実情ですが、地元企業にしても一定にわたる好景気に支えられ、相応の収益を納めている企業は少なくありません。

故に、事業規模の拡大、人員の拡充も含め、現行オフィスから新たなオフィスへ転居を望む企業も多く、しかし、こと広島では仮に転居先となるオフィスは存在しても、更なる生産性の向上を目指し、煩雑化を防ぎ、効率化を図る上で、例えばワンフロアに1000u、約300坪くらいの規模を保ち、入居できるオフィスが圧倒的に不足しており、一概には言い切れずとも、この辺りは都市が時代のニーズに対応できておりません。

ここへ付言いたしますと、現在は都市規模を問わず、先ずはオフィスビルに最新のIT環境が整えられ、しかも都市部の災害が頻発化、甚大化する近年、自家発電機能を備え、災害時にも電源が担保される、こうしたオフィスに人気が集中しているのは当然ですが、何より会社内で階段やエレベーターを利用して、上下のフロアへ足を運ばざるを得ないなどの非効率を防ぐべく、ワンフロアに、ある程度の広さが確保されたオフィスを望む経営者の真っ当なるニーズが、より顕著となる傾向にあります。

無論、広島の場合も一定の広さを誇るオフィスについては即座、買い手がつけば、賃貸オフィスにせよ高い賃料でも「入居する企業が後を絶たない」状況で、ビルを所有するオーナーにとりましても建設、竣工後に「空室で頭を悩ます」ケースは過去の話となりつつある現状。

本市でも「都心の活性化」にあたり、民間活力を導入しながら「商工会議所の移転」なども、リーディングプロジェクトに掲げておりますが、現商工会議所ビルのテナント展開などは、民間と連携しながら改善を必要とする最たる例であります。

そこで伺いますが、今後、都心部の新たな再開発を進める上では、是非とも「大型オフィス空間の確保」に努めて頂きたいと願うのですが、ここに本市のご所見をお聞かせ下さい。

続いて、創生総合戦略の基本目標3「文化が息づき豊かな人間性を育むまち」についての第4章に触れて参りますが、ここに並ぶ指針を要約いたしますと「多様な市民が活力に溢れ、生きがいを感じ、生き生きと暮らせるまち」、更に「広域都市圏全体の活力と賑わいが創出されるよう、文化・スポーツ活動に対する支援や参加機会の提供、環境の整備、その更なる振興に取組む」とありますので、改めて「サッカースタジアムの建設」にスポットを当てて参ります。

先月、「中央公園サッカースタジアム基本計画」の素案が公表されては只今、この素案に対する市民意見が募集されており、今後は集められた意見等も踏まえ、基本計画案が取り纏められ、今年度末に開催される「サッカースタジアム建設推進会議」にて正式な基本計画として策定された後、設計、施工の準備を進めるべく事業者を選定。

いよいよ、徐々にスタジアムの絵姿が現れては最終段階を経て「2024年の開業を目指す」段取りとなりますので、ここに今一度、今後のプロセスを再確認しておきたいと存じます。

まずもって、当然至極の話で恐縮ながら、コレより設計や施工を民間へ発注するにあたり、そこでは単にフリーハンドで自由な発想を募集するにあらず、本市が求める方向性、持たせたい機能、また許される事業費と、あくまで緩やかに一定の縛りを提示しては、その制限の中、民間事業者が縦横無尽に創作をされ、専門的な知見の伴うアイディアが本市へ寄せられる事になる。

こうした遣り取りの入口で、言わば「募集要項」であり、また、契約時の「仕様書」とも言える重要な役割を果たすのが、先に公表された基本計画となります。

更に、今回の様な大きな建設工事の入札、発注に当たっては、必然的に国内外の企業を平等に取り扱うよう政府で定められている調達契約「WTO案件」に該当しますので、つまりは東京五輪のメインスタジアムとなる新国立競技場と同様、本市の場合も世界から、最先端の創造性に富んだ多様なるアイディアやデザインが寄せられ、また、本市では用いる整備手法として、設計・施工が一体の「デザイン・ビルド方式」を基本に据えており、こうした施工面でも世界規格の施工技術が本市へ反映される可能性を多分に孕んでおります。

いずれに致しましても、繰り返しとなりますが基本計画の「出来、不出来」が今後を占うのは間違いなく、そう言った意味に於いては私など、行政の政策へ対して直ぐに礼賛の声を上げる議員ではありませんけども、全9章からなる、この度のスタジアムに関する基本計画素案は、施設整備の部分を含め非常に熟慮、練り上げられたモノであり、僭越ながら過去10年間、全国的にも大手の建設・設計会社と無数の会合を重ねて来た私と致しましても、正直「頷いている」のが実情です。

しかし、本質を見失う事なく出発点を顧みれば、スタジアムの建設が「目的」ではなく「より良い広島市を創出する」為に用いる、その一つの「手段」が、スタジアムの建設であり「スタジアムを通じてのまちづくり」を含めて、これより伺って参ります。

昨年末に、市の担当職員が海外のスタジアム事情を視察され、その報告が基本計画素案の末尾にも掲載されておりますが、改めてスタジアム単体については勿論の事、スタジアムを通じての街づくり、賑わいの創出につきましても、この度は基本計画の素案を作成するに当たって如何なる収穫があり、また、単に諸外国や国内の先進事例を追随するのではなく、今後「広島のオリジナリティ」を追求するにあたって、如何に反映して行こうとお考えなのか、お聞かせ下さい。

では結びに、サッカースタジアムの建設に際し、幾つか要望を加えさせて頂くとして、先にも述べました通り、本市はサッカースタジアムの整備手法として、現時点では「デザイン・ビルド方式」、つまり「一括方式」を念頭に置かれており、コチラは従来の「設計・施工分離方式」と違い、手順や工期の効率化、短縮化が可能であり、コストの縮減にも寄与するなど多くのメリットがありながら、一方ではデメリットも内包いたします。

一括方式の場合、仕上げ段階での予算を握る施工サイドが要所に稼ぎ分の見込める設備、機能を過度に導入するなど、英語では度が過ぎて悪目立ちする意味で「Feature Creep」などと申しますが、仕様変更を幾度も繰り替えし、機能過多となりては重要な「利用者目線」がおざなりとなる建築物の乱立が実際に近年も、この一括方式の問題点として挙げられています。

一例では、4万人以上の「クラスS」ではなく、身の丈に合った3万人規模となる「クラス1」のスタジアム建設を進めているにも拘わらず、明らかに最上級のクラスSでも「お釣りが来る様な」設備や機能が、いつの間にか要所に盛り込まれていたり、また、建設へ向けて走り出している事業を良い事に、敢えて不穏当な表現を用いますが「在庫一斉セール」の如く、業者が持て余した機材を導入される。

こうした事例も実際に発生しており、ここを防ぐ意味でも、釈迦に説法となれ「一括方式の功罪」を念頭に、契約の締結後も「発注者の継続的な定点観測」と申しましょうか、常に受注者側との意思疎通を図るコミュニケーションは必須であります。

続けて、もう一点、通常の「設計と施工が分離方式」の場合、設計者は「実現したい」理想の設計を描きながら、しかし施工サイドとしてはコスト面や技術的にも設計サイドの理想、要望へ「対応できかねる局面」が要所で発生して来るのは常となります。

こう言った、所謂「両者の摩擦が生じた」際は通常、幾度も折衝が重ねられる事となりますが、「一括方式」の場合、この辺りが「時間の短縮化」との呪縛により簡素化されては足早に妥協点へ着地してしまい、結局、在り来たりの建築物が誕生する事に繋がってしまう。

こうした「在り来たり」だけは絶対に回避して頂きたく、何もここぞとばかり奇抜なデザインや機能を求めたりと決して奇をてらう必要はありませんけども、今後の建設過程に於いて私が最も注目する点は、例えば新国立競技場のコンペで審査員の方々が吟味する際、「審査の観点」に重要ポイントが5つ設定されており、その中の一つに「技術的なチャレンジ」の項目がありました。

本市の場合も同様で「ここまでチャレンジしている」との姿勢は、かの丹下健三氏が、平和記念公園の建設に着手された際、掲げられていたコンセプトでもある「ヒューマンスケールからの脱出」にも合致するモノで、南の平和記念公園から北のサッカースタジアムまで「被爆の惨禍から復興した」一連のストーリーを形成する上でも、都心部一帯空間の「創出」に留まらず、是非とも空間の「演出」にチャレンジして頂く事を、ここに強く要望いたしまして、私の総括質問を以上と致します。

ご清聴、誠に有り難うございました。